視線の先には 〜第三夜〜 後編

2019年05月09日
ちょっと怖い話

前方に誰かいるようだ。
目を凝らすと、どうやらこっちに向かって歩いて来ている。午前0時は過ぎたであろうそんな時間に、こんな場所で……とはいえ、どうしようもない。
不審者か、終バス乗り遅れて近道で帰る人なのか…。
警戒しつつTさんは歩き続けた。

歩くにつれ、向こうとの距離は縮まってくる。顔のあたりがなんとなく白っぽく見える。
だんだん近づいてくる…
どうしたわけか、気付くと心臓は音を立てて飛び出しそうに鳴っている。直接見ないようにしていてもぐんぐん距離は縮まっていく…。

そして、すれ違う瞬間。
(どんな奴なんや…?)って思ってTさん、目だけ動かして、チラッと見たんですよ。

でも、そこに、人の顔は無かった。
ちょうど目の位置に、暗〜い穴がふたつ空いた、青白い仮面があったんです…

(うぅわあぁぁぁぁぁ———っ……)

声にならない叫び声をあげ逃げ出したい恐怖を必死に抑えて、Tさんは振り返りもせず黙ってひたすら歩いた。走り出すと危ないって思ったんですね。ともかく平静を装いながら、必死に歩いて歩いて…
でもって、ようやく家に帰り着いたんです。


「…何なんや、あれ…佐清(すけきよ)⁈ 『犬神家の一族』の佐清みたいな、白ーい仮面とすれ違ってん……」
「何それ、怖っ…!! 何か言われたり…追いかけられたりせんかったん?」
「いや、何もない。無言ですれ違うただけや。でもな、……」
「でも なに…?」

…食卓の料理はとっくに冷めていた。
冷めた湯呑みを掴み、一気に飲み干してTさんは言った。

「…見える筈ないねんて。街灯無い真っ暗やで? なのに最初から白っぽく見えたんや…
何が怖いって (誰かおったりしたら嫌やな…)って思った次の瞬間、俺の心読んだように突然現れてんで、唐突に‼︎ それが、物凄い、嫌や……!」

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…いかがでしたか。
この話は長い間封印していた実話です。封印っていうとなんやら曰く付きみたいですが、お披露目する機会が無かっただけで。後日、当該場所の噂など調べたんですが、これといったものに行き当たらず…。けれども怪異は、ごく身近で起きていたんですね…。

怖楽しんでいただけたなら幸いです。
ご来訪ありがとうございました。

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mojorum
Posted by mojorum
世の中にたえてニャンコのなかりせばワテの心はのどけからまし