視線の先には 〜第三夜〜 前編

2019年05月08日
ちょっと怖い話
そこそこ長生きしていると、不可思議な出来事に遭遇することもありますよね…。「視線の先には」シリーズ、たぶんこれで最終話かと。
怖い話が苦手なお方は、どうぞスルーなさってくださいませ。大丈夫、霊障は全くございません。体験者も、話を聞いた私も、元気にしとります(笑。

それでは第三夜、稲川淳二さんふうにご案内いたします。




みなさん、こんばんは。お待たせいたしました。『視線の先には』〜第三夜 〜、そろそろ始めましょうか、、。

私の古くからの友人でTさんという人がいましてね。これは、そのTさんから直接聞いた話です。

今から何年前になりますかねぇ。Tさんの当時の勤務先が運輸業でして。取引先は流通業、お盆や暮れの時期は勿論、バレンタイン等のイベント期間はそれはもう忙しくて。 幸い、自宅から勤務先までは近かったので、自転車通勤していたんです。運動にもなって片道20分くらいでしたし。

そんなある日。折しも繁忙期、職場で夜遅くまで翌日の準備をしていたTさん、時計を見ると午後11時になろうとしていた。で、自宅で待っている奥さんに電話したんです。

「あ、もしもし、Tですー。今日ね、あと少しで終わるから…そうやな、0時ちょっと過ぎるかなぁ…。うん、実は今朝途中でパンクしたん。で、押しながら歩いて帰るしそれぐらいになるわ…うん、はい、はい、じゃあね」

朝の通勤途中に自転車が運悪くパンクしてしまって、歩いて帰るから午前0時を過ぎるだろうとTさんは奥さんに伝えたんですね。
勤務先も自宅も北摂にあって、結構、アップダウンのある丘陵地なんです。
いつもなら帰り道は下りなので、自転車だとスーッと帰れる。でも、今夜は自転車押して歩きで帰らなきゃならない。

Tさんから電話を受けた奥さんは、Tさんが帰宅したらすぐ夕食を出せるよう整えて台所で帰りを待ってたんですね。

そうしてると玄関の鍵の開く音がして、時計を見ると0時半近くだった。無事帰って来たなーと、ホッとしながら奥さん、玄関までTさんを出迎えに行ったんです。

「おかえりなさい…! 歩き、しんどかったでしょう…!」
と、ねぎらいながらTさんを出迎えた。
ところが、返事がない。後ろの扉は閉めて玄関内にいるけどTさん、靴も脱ごうとせず、ぼーっと無言で突っ立ってる。

「どうしたん…?パンクした時転んだ?ケガでもしたん…?」

黙ったままのTさんに奥さん、不安になって尋ねたんですよ。

「…いや、ケガはない… けど俺、なんか凄い変なもん、見た…」
「…変なもん?」
「うん、、凄い怖いもん…見た…」
と、Tさん、茫然としてるんです。

「まぁ上がり。着替えて。ごはん食べながら話聞こ」
と、突っ立っているTさんを促して。
ケガはないと聞き安堵しつつも、ただならぬTさんの様子に、固唾を呑みながら奥さんも食卓に付いた。

Tさん、パンクした自転車を押しながら職場から自宅への道を歩いていた。その径路なんですが、これが閑静な住宅街でして。近くに国立大学や私学の高等部など複数の教育機関、また、国立の高度医療センターもあり、公園がぽつぽつとあって…緑豊かで静か〜なところなんですよ。

で、途中に大きな公園がありましてね。地元ではK公園と呼ばれてますが、S公園と言いまして。このS公園、原っぱだけでなく溜め池や体育館、プールなども併設されているとても大きな総合公園なんですよ。そんな公園なので、通勤の近道にいつも公園内を通り抜けてたんですね。

帰りもその公園を通り抜ける。まして仕事で遅くなった上、自転車はパンクしている。…ただ、Tさん、一瞬考えたんですね。夜の公園を歩いて帰るのかぁと。でも、通り抜けないなら、公園に沿った外周道路を延々歩かなきゃならない。なにしろ広大な公園だから距離も半端ない。

一瞬考えたのは訳があって、この公園の抜け道の一部、鬱蒼とした森になっているんです。ほんの短い距離なんですが坂道で、昼間でも薄暗い。その坂道に街灯はなく夜は真っ暗。
でも帰りは下り坂だし、明日も仕事。早く帰宅したかったTさんは、いつものように公園に向かいその坂道を下り始めた。

自転車を押しながら、くの字に曲がった真っ暗な坂道を下って行く。いつもなら自転車でスーッと通り過ぎて、明るい遊歩道にすぐに出られるのに…歩くと結構長い。
(はよ抜けたいなぁ、もし誰かおったりしたら嫌やし…いや、俺くらいやろ?こんなとこ、こんな時間に歩くんは…)
と、思ったその時。



< 後編へ続きます…>

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mojorum
Posted by mojorum
世の中にたえてニャンコのなかりせばワテの心はのどけからまし